水玉みかん さんの連載、順調に3回目を迎えて 『あーら わが殿!』考です。

このタイトルを見て最初に思ったのは、 「これって、落語の『たらちね』から取ったのかなあ」という事でした。
ご存知ない方のために、『たらちね』は、どんな話かと言いますと、大家さんの仲人で、 お嫁さんをもらう事になった八五郎。 やって来たお嫁さんは、御所づとめをしていた人なので、御所風の難しい言葉でしゃ べります。
例えば、野菜の行商人を呼ぶのに、「門前に市をなす賤の男(しずのおのこ)」と いった具合。
堅苦しい漢語調のセリフと、長屋の八つぁんとの掛け合いが面白い。

そのお嫁さんが、新婚の朝、夫の八五郎に呼びかける言葉が、「あーら わが君」で す。
「あーら」は、感嘆詞「あら」を強めて言った形ですが、この落語ではこの呼びかけ に、新妻の、旦那様に対する愛情が出ているように思います。 (つまり、このお嫁さんは、決してお高くとまっているわけじゃないってことね。 夫より先に起きて、勝手の分からない台所で、かいがいしく朝食の仕度をしようとす る様子が可愛くて、ほほえましいのです。)
『あーら わが殿!』というタイトルから、『たらちね』を連想するのが、妥当かど うかわかりません。ストーリーは、ほとんど関連性はないようです。

余談が長くなりました。
『あーら わが殿!』です。
時代劇フリーク、和服まんがフリークの私としては、「待ってました!」と言いた い、そんな作品でした。
連載当時は、明治時代が舞台というだけで珍しかったのです。
『はいからさんが通る』に先行すること2年。はかま姿の女学生が活躍するという設 定も新鮮でした。

この作品は、『摩利と新吾』の原型として重要なだけでなく、独自の面白さもたくさ ん持っています。
共通のキャラクターでも、性格付けに多少違いがあったりして、どちらが好みかは読 者によって意見の分かれるところでしょう。

私は、どちらもそれぞれに良い所があると思っていますが、白菊丸クンだけは。  ぜーったい!『あーら わが殿!』の方をひいきしています。 はっきり言って、『摩利と新吾』の白菊は、他の個性的な脇役の影でかすんでしまって、 何故か顔も可愛くない。
どうしたの?白菊。『天まであがれ!』でも、あんなに活躍したのに。いったい何が あなたを変えたの?
『あーら わが殿!』では、見た目の可愛さもさることながら、悩んだり、新吾とは りあったり、失恋したり…。
  とにかく、「白菊自身のドラマ」があって、泣かせます。

夢殿さんも、紫乃さんも、星男も、織笛も登場しないけれど、がっかりしないで機会 があれば、みなさんに読んでもらいたい。 白菊丸を見直す事、うけあいです。

オリジナル・キャラで注目は、千鶴先生
『天まであがれ!』の蓉姫を思わせる、毅然とした美人。
ヒロインのお姉さん格で、一途な恋に人生を賭ける所も似ています。 このコーナーのタイトル、「おもいをこめて、まず告げて」もそうですが、この人の 科白は七五調あるいはそれに近いことが多く、心に残る名セリフがたくさんあります。 私が好きなのは、

「おひかえあそばせ悪童ども!そこな乙女はわたくしの生徒。つれ て帰ります、そこおどき !!」

七五調の言葉って、大時代ではあるけれど調子がよいので、日本人には快く響きます。
言いやすく、覚えやすいので、交通安全の標語などもたいてい七五調です。 DOZIさまの作品にも七五調の言いまわしは、たくさん出てきます。
リズミカルで、印象深いフレーズが多いのは、そのためでしょう。
お能も歌舞伎もセリフは七五調ですから、お芝居好きでいらっしゃるようですし、自 然に言葉が紡ぎ出されてくるのかもしれません。

最後に、これはDOZIさまが考えられたのではないと思いますが(集英社の編集の 人でしょう)、25年間忘れられない名文句。
 「八方まるくおさまって、よかったよかった最終回」
『あーら わが殿!』最終回の扉ページに出ていたコピーです。
ハッピーエンドは、70年代ロマコメのお約束。
くったくのない明るさが、主人公たちと同年代だったあの頃の自分の姿と重なって、 大好きな作品です。


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いつもながら、愛情あふれる御投稿、ありがとうございます。
このHPの名称をご覧になってもおわかりのとおり、『あーら! わが殿!』は、 私にはとても思い入れのある作品で、タイトルを聞くだけで平静ではいられません。 どんなコメントになるやら自分が怖いのですが、いってみたいと思います。

落語は“領域外”なので、水玉みかん様のご指摘がとても新鮮でした。 直接の関連性はさて置いても、口調、語調の良さの由来のご指摘はなあるほどです。

70年代のロマコメであるこの作品、連載当時から「最後は誰と誰がめでたく落ち着いて、 ハッピーエンドになるよね〜」なんて言いながらマーガレットを読みまわしていたくらい、 充分ラストは予想できるストーリーでした。
でも、「え? こんなのあり?」「嘘!」「でも」「だって」なんて、毎週目が離せない展開があって、 みんなでわいわい夢中になっていたものです。“きつね狩り”という言葉が 流行り(言葉だけでなくて、遊びもだったりして…)、デカダンスの極み“へリオガバレス流 リンチ”なんて大笑いして、(どっちも仕掛け人は摩利くんよ!)、ついでに“Der Teufel hole sie !”(悪魔よ 彼女をつれてゆけ)なんてドイツ語を覚えて…。
と、まあ、思い出を語れば、つい熱くなってしまいます。

それにしても、水玉みかん様、意味深…。

>夢殿さんも、紫乃さんも、星男も、織笛も登場しないけれど、

そうです、この4人は登場しないんです。
ということは、それ以外の人は登場する可能性があるわけで…、うっふっふ、「ええ!? あの人が?」 という思いもかけないドラマがあります。
かと思えば、この時代から“おみきどっくり”が“おみきどっくり”だったように (ただし、ひらがなでした)、「おお、この時代からだったのね」という納得もあります。
この文章を書きながらもリアルタイム世代の私は、「ああ、これからの方は『摩利と新吾』を お読みになってから『あーら わが殿!』にさかのぼるのね」と、感慨に浸って しまいます。

そんなリアルタイム世代のノスタルジーが、扉絵のコピー文や各ページの柱の文言です。

>「おひかえあそばせ悪童ども!そこな乙女はわたくしの生徒。つれて帰ります、 そこおどき !!」

連載時は、3段抜きのたすき姿もあでやかな千鶴先生のこの科白で、次週に続く!という展開だったの ですが、そのページの“おっとりがたなで かけつけた千鶴先生”と書かれたを読んで、 思わず“おっとりがたな”という言葉の意味を調べたのも、懐かしい思い出です。

このHP“あらDOZI”のトップを飾っている“のってる のってる ドジさま快調!”は、 連載5回目のカラー扉、新連載の時が“イキなセンスが キラキラ光る”と、 どのコピー文も口調が良く印象的でした。
もちろん、最終回は水玉みかん様のご記憶のとおりです。というわけで、その扉絵をご覧に入れて、 今回のオチにさせていただきましょう。
週刊マーガレット
1974年11号より
コピー部分拡大図
(1999.10.7 up)


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