愛しき言つくしてよ
初版 2001年12月10日

愛しき言つくしてよ (秋田文庫)
ISBN 4-253-17510-4

この本について木原先生が拙サイトインタビューで2001年11月にお話くださっています。 こちらをご参照ください。
[ 収録作品 ]
愛しき言つくしてよ(うつくしきことつくしてよ)
初出 1977年 LaLa 1月号
 5歳で母に捨てられ、15歳で父を亡くした日独混血のインゼル・虹比古(にじひこ)は、母や双子の弟への愛憎からバレエで和洋混淆の舞台を試みる。モチーフに選んだのが万葉集の相聞歌「恋ひ恋ひて逢へる時だに 愛しき言尽くしてよ」
 日舞の天才と言われるパウル・彩比古(あやひこ)、その婚約者であり家元の孫娘・那智、そしてやがては、虹比古自身も和解を願う。しかし彼ら若い世代の知らない過去の確執は清算されていなかった。
無言歌
初出 1978年 LaLa 12月号
 大郷空也(おおさと そらや)はソルボンヌ大学留学中に母の事故死を知った。失意のどん底で出会った青年貴族ジェルジは「生まれたのはショパンの国 育ったのはマジャール人の国ドゥナのほとり」
 ジェルジが背負う重荷の中身がうすうすわかってきても、空也は彼との成り行きを論理的に説明しようと思わない。「運命だ」のひとことで十分だ。
 逃げ出すように飛び出した祖国、重くはげしい恋、歴史はすべてを飲み込んで1956年、ハンガリー動乱が勃発した。
アモール
初出 1976年 プリンセス 5月号
 とびきりの美青年クールオディールが家出して優雅な別荘住まいを決め込んだ。春の小雨の中、迎えに来たのはモンシロ蝶姫リンと、くまんばち少年サーロ。
 恋の予感は甘美だけれどいつの間にやら嫉妬が芽生え、ましてや、もてあます恋は「よりそえど ことばも知らず まぶしくて」
 おさまるところにおさまる愛があれば、はみ出して行き場のないミ・アモールは「けむる春 ひるさがり 白い傘」
白い森
初出 1975年 花とゆめ 8月号
 白きたそがれ白き森、ヨツンヘイムの死霊伝説が残る北欧、忘れ雪が舞う季節はなだれが多い。その昔はお城がひとつなだれの下敷きになったとか。
 すけるような金髪、青い目、雪の肌、死神だって恋しそうな少年フリーレミンは、義理の伯父のもとでつらい生活を送っている。見かねて救いの手を差し伸べたのは……。
お茶の時間(グルメの条件)

解説 ゆりあ
(2001.11.18 up / 02.10.19 追記)