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◆◆ コンサートレビュー 10 (2) ◆◆


(2) ヨハン・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」
    2002年 7月19日 バーデン州立歌劇場

幕間の風景
幕間にテラスでくつろぐ聴衆
 バーデン州立歌劇場のレパートリー公演の演目ですが、GMD(音楽総監督)大野和士が振るのは初めて。
 しかし大野さんは、ミュンヘンにおいてカルロス・クライバーのアシスタントを務められ、 また、日本でも、長年にわたって「ニューイヤー・オペラコンサート」の指揮台に立ってこられましたので、 「こうもり」は隅から隅まで熟知。
 実は、この最終公演の前にも、13日には劇場総裁、音楽総監督などの「お別れ公演」として、大野さんはじめ 3人の指揮者が3幕を交代で振る、という趣向の公演がありました。
 また、この19日は15時開演と20時開演の2回とも、大野和士指揮で行われました。

 オペレッタ上演の「楽日」ということで、恒例により、ギャグの連発。満員の客席は沸きに沸きました。
 もっとも、早口のドイツ語は、私にはほとんど聴き取れませんでしたが。

 この劇場も、ロビーから客席に入るところで「もぎり」がありますので、休憩時間にロビーに出ると、 劇場の外へも自由に出られます。
扇子で指揮をする大野和士
第3幕の幕開きを扇子で指揮
 「こうもり」を見に来た満員の聴衆の間では、きっとこの日はゼクト(ドイツ風シャンパン)が好まれたに違いありません。
 しかし最高に聴衆が沸いたのは、第3幕の指揮者登場。
 オーケストラ・ピットの中で、ガラン、ゴロンと大きな音がしたと思ったら、楽員たちが笑い始め、そして拍手喝采。 客席も立ち上がってピットを覗き込むと、そこにはなんと、羽織袴姿の大野和士。 下駄の音をピットに響かせていたのです。
 さっと振り上げるは、指揮棒ならぬ扇子。
 ドイツの劇場では前代未聞の椿事だったに違いありません。

 大野さんは、師匠のクライバー仕込みの、疾走するような快活なテンポで、まさにオーケストラを煽って(?)いたのですが、オーケストラはぴったり。
 大野さんによると、ドイツ語で:lottという言葉で表現される、「粋な」、「うきうきした」、「気のきいた」感じを大切にしたそうで、まさに、音楽を聴いているだけで、体が踊り出すような演奏。

 最後のカーテンコールに、大野さんが下駄の音も高らかに(?)羽織袴姿で登場すると、出演者がいっせいにお辞儀で迎えるサービスぶり。
 満員の聴衆も大喜びの楽しい夕べでした。
華やかなカーテンコール 舞台右から三人目に羽織り袴の大野和士
華やかな舞台を背景にカーテンコール 舞台右から三人目に羽織り袴の大野和士

(2002/08/08 up)



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