ストロング山下 さんです。
『花伝ツァ』(白泉社 花とゆめコミックス) の読書感想をお送り下さいました。
ずいぶん前に御投稿を頂いたのに、掲載が遅れてごめんなさい。

花伝ツァ、おもしろかったです。
時代物として、世界観、ひらたく雰囲気とも言えますが、これがきっちりできて いると思います。 どこか見果てぬ時の見知らぬ処で繰り広げられる御伽噺です。

上月と花車の恋愛沙汰なのですが、二人とも男性というのは気にならなかったで す。花車を女顔に設定してあるからでしょうか。命をかけて上月のいいつけを守 る花車がとてもいじらしいです。
物語の軸であるこの二人が、人と鬼だということも忘れて読みました。純愛にお いては男と男だからとか、人と鬼だからとかは関係ないんですね、きっと。

しかしながら、そういうことと別面では、なぜ花車が男設定なんだろうと思いま した。
言い方を変えると、花車が女性だとどういうふうになるのだろう・・・って。
男と男の愛って、女性には完全なるフィクションであり、大多数の男性にとって もフィクションなんですね。ここらあたりを考えると、ちょっとおもしろいかも しれませんね。
花車が女性だったら、あんなにいいコいいコしてなかったのではないでしょうか(笑)
なんだか、私の屈折した女性観がバレバレですね(爆)

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ふう、先ずはお気に召していただいたようで、ほっとしました。
と申しますのは、DOZIさま作品をお読みになったことのないストロング山下さんに 『花伝ツァ』をお勧めしたのは、他ならぬ私だったからです。

とにかくケタが違う方です。王道、正道、外道、魔道、暗黒道、上から下まで、そして右から左まで、 って特に意味のないフレーズを並べていますが、要は あらゆるジャンルの漫画を、週に100冊からお読みなると伺っています。 (近頃はお忙しすぎて、ややペースが落ちているそうですが)
そのHP、
「漫画 鳳凰殿」は 雑誌で紹介されることも多いし、そこで話題になった古本は、 必ずプレミアが付いて価格が跳ね上がってしまうとか…。

穏やかなお人柄ながら、漫画については厳しい目をお持ちの方なので、どのように評されるか… 心配でした。この分ならば、鳳凰殿木原敏江の間を作っていただけることも 夢ではないかもしれないと、勝手な期待を膨らませてみたり…。

しかし、さすがに突っ込みが鋭いです。

>なぜ花車が男設定なんだろう

身も蓋もない言い方をしてしまうと、DOZIさまが 『雨月物語』『菊花の契』をサブ・テキストにしているからなのです。 が、それで納得しては面白くありません。もう、ちょっと、考えてみましょう。

>言い方を変えると、花車が女性だとどういうふうになるのだろう・・・って。

上月には玉手という許婚者があります。一族のしがらみや家同士の思惑のような夾雑物も 存在してはいるけれど、情愛も存在しています。だから、花車が女性であれば、この情の部分で 玉手と、しっかりひとつの土俵で立ち会ってしまいますよね。 古典的にして正当な三角関係です。その結果、どちらに軍配が上がるかは、

>花車が女性だったら、あんなにいいコいいコしてなかったのではないでしょうか(笑)

という部分も含めて、私にはちょっと見当がつきませんが。(笑)

では、私からの質問。花車が人間の男性であったらどうなったか?

いちおう、私なりの考察をしておきますと…
『摩利と新吾』の中では、摩利新吾に向かって、 「重婚だと言って訴えてやる…という手もある」と、言い放ったことがあります。 また、花車と同じような立場に置かれた『薔薇あど』ヴィオルは、 摩利とは違うやり方で結論を出しました。
でも、どちらのパターンにしても、花車が男性であっても、人の世に存在するものであれば、 上月の身近に存在する立場を争って、やはり、玉手との間には、 対峙する関係が成立するでしょう。
花車が人外の存在で、なおかつ、女性でないからこそ、 人間界の夾雑物からも通念的な情愛からも自由な、上月と花車の 『花伝ツァ』の世界になるような気がします。
(1999.7.29 up)


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