中央公論社 マンガ 日本の古典

雨 月 物 語

初版印刷 1996年12月20日

全32巻の「マンガ 日本の古典」 シリーズの第28巻。原作は上田秋成です。

DOZI様のあとがきから・・・
「雨月物語といえば、夏になるとジャパニーズホラーの定番としてよくとりあげられますが、私はちょっと違うんじゃないかなと思っています。
たしかに人も死にますし、モノノケも怨霊も出没しますが、特に今回とりあげたこの四篇の物語には情愛が色濃く流れていて、ゆえに妖美怪奇の凄みが増しているのだし、けっしてその逆ではありません。 ですから、情緒より恐怖をメインに追求されても、違うわよね、と。」


巻之一 菊花の約 (きくかのちぎり)
「究極の同性愛」と、上田秋成を研究しているエライ学者さまも、 断言している物語とか。15世紀末に出雲の国で起きた戦国時代初期の下克上事件が 背景。
『花伝ツァ』がお好きな方はぜひ御一読くださいませ。

巻之二 浅茅が宿 (あさぢがやど)
15世紀半ば、京都は足利八代将 軍義政の 東山文化が花盛り。でも、すでに全国的に戦乱が起きている時代。 万葉集の“真間の手児奈”のエピソードを重ねながら「究極の夫婦愛」です。

巻之三 吉備津の釜 (きびつのかま)
やさしくて、ひたむきで貞淑な妻。とことん裏切られてしまったら、昔は生霊になり 死霊となって祟るしか術がなかったのでしょう。
「別れたら次の人」と言える現代人は、そんな轍を踏まずに生きたいですね。

巻之四 蛇性の婬 (じゃせいのいん)
「婬」ってどういう意味なのだろうと辞書を引けば、「いつまでも女性に戯れる。 また、そのさま」と。うーん、秋成がイメージしていた意味とは ちょっと違うような気がします。
成らぬ恋ほど燃え上がるのは、時代を超えた真実なのかもしれないけれど。

(1999.7.21up)